多分これが最初の読者リクエスト。
《アレクストラーザ/Alexstrasza》や《マリゴス/Malygos》のお話が読みたいってリクエストを貰ったは良いが、ドラゴンの話となると入り組んじゃうので、どうせならアスペクト全員の話をしよう、そうしよう。
って事で中核にいる5匹の【ドラゴン族の長である〈アスペクト/Aspect〉】全員の話をまとめてしてみた。

■ガラクロンドとの戦い〜アスペクト誕生
ドラゴン族はもともとプロトドラゴンと言われる知識が乏しい種族で、比較的頭のいい個体が種族を率いていました。
しかし、始祖竜〈ガラクロンド/Galakrond〉が共食いにより異様な力を付けバランスを崩します。
更にガラクロンドに食われたプロトドラゴンはアンデッドとしてガラクロンドの手下となりました。
ガラクロンドとプロトドラゴン連合軍は何度か対決をしますが、しばらくはガラクロンドが圧倒的な力を見せます。
後に〈ウオッチャー(監視者)/Watcher〉(タイタン族が生み出した世界の監視役)の援護を受けたマリゴス、アレクストラーザと妹《イセラ/Ysera》、《ノズドルム/Nozdormu》、そして〈ネルサリオン/Neltharion〉の5体がガラクロンドにノースレンドの〈ドラゴンブライト/Dragonblight〉地方で戦いを挑み、マリゴスが巨大な岩をガラクロンドの喉につっかえさせ、ネルサリオンがその岩を取れないように押し込みガラクロンドを窒息死させます。
ガラクロンド戦が終わった時、プロトドラゴン達の前にウォッチャーが現れ、アゼロスを守る覚悟を決めたこの5体に永遠の命と〈黄昏の時間/Hour of Twilight〉なる世界滅亡の危機を切り抜けるための力を授け、彼らがアスペクトとなったのです。

■ドラゴン族の現状
アゼロスの歴史では表面上、アスペクトはガラクロンドからタイタン族が作り出したとされていますが、実は上記の通り、アスペクトはタイタン族の僕がガラクロンドを討伐したプロトドラゴンたちに力を与える事により誕生しました。
ただし、ガラクロンドが共食いにより力を得た事を踏まえ、第二のガラクロンドが出現しないようにと、アスペクトたち本人により真実は闇の中に葬られています。
アゼロスにおけるドラゴン系は色別で種族分けをし、昔は様々な色が存在しましたが、現状ではアスペクト達に対応した5色の〈ドラゴンフライト/Dragonflight〉(以後フライト)、すなわち〈黒/Black〉〈青/Blue〉〈青銅/Bronze〉〈緑/Green〉〈赤/Red〉が中枢になっています。
実際にはこの5色以外のドラゴンの種族も現存していますが、これらはアスペクトと呼べる長がいないので今回は割愛します。

■時間のアスペクト〜青銅のノズドルム
ノズドルムは時間の守護者となりました。
古代大戦後、世界樹〈ノードラシル/Nordrassil〉に魔法をほどこし、ナイトエルフに永遠の命を授けました。
(なお、この不死性は〈三次大戦/Third War〉で失われます。)
その後は隠居し、青銅フライトのドラゴンですら居場所がわからない程の気配の消しっぷりを発揮しますが、消えてる間に〈旧神/Old Gods〉がアゼロスの世界を滅亡させようと動いている事に気づきます。
未来のノズドルムは気が狂い、〈無限のドラゴンフライト/Infinite Dragonflight〉(青銅族から離脱し、旧神の門下になった一派)のボス〈ムロゾンド/Murozond〉になり、過去に干渉しようとします。
それを知った現代のノズドルムは冒険者達にムロゾンド討伐を頼み、その道中で冒険者たちは旧神により『黄昏の時間』が発動し、世界が滅亡した場合(真の世界の終わり)の一部を垣間見ます。
英語のフレイバーテキストは「世界観に関する一言を書く時間だね。」と、時間の守護者らしく時間に関する説明となっています。
急いで書く必要は、英語版ではまだないんだよ~!

■夢のアスペクト〜緑のイセラ
アレクストラーザの妹であるイセラは〈エメラルドの夢/Emerald Dream〉(簡単に言うと幽界の一種であり、タイタン族が「アゼロスの青地図」と言う意図で作成した世界)の番人として、基本的にリアルでは常時トランス状態で『エメラルドの夢』を介しアゼロスを見守ります。
半神〈セナリウス/Cenarius〉の里親でもあります。
性格は温厚で戦いや殺戮を嫌い、仕方なく戦う場合は基本的に敵をブレスで眠らせます。
寝ている者の夢を経由し移動したり、現実と『エメラルドの夢』を行き来できます。
古代大戦後ノードラシルが植えられた時、〈永遠の泉/Well of Eternity〉の力をコントロールするためにも『エメラルドの夢』とノードラシルを繋げました。
しかし『エメラルドの夢』も常時安泰と言うわけでもなく、悪夢に苛まれた事もあり、悪夢の勢力にイセラは幽閉されたりもしましたが、主に《マルフュリオン・ストームレイジ/Malfurion Stormrage》の活躍で悪夢は概ね撃退されました。
そして、基本的には夢の中で過ごしますが、起きて地上で活動する場合もあり、《炎の王ラグナロス/Ragnaros the Firelord》が復活した時はハイジャル山とノードラシルを守り再建するためにマルフュリオンや〈ハムール・ルーントーテム/Hamuul Runetotem〉の戦いを援助しました。
英語のフレイバーテキストは「イセラは『エメラルドの夢』の統治者である。その夢って現実世界にとっては緑色の鏡世界のような物か何かなの?」と、日本語版と比べあまり変更点はありませんでした。

■魔法のアスペクト〜青のマリゴス(と、カレクゴス)
アスペクト5体中最年長のマリゴスはもともと聡明でガラクロンドとの戦いでも序盤はリーダー的な存在でした。
授けられた力は魔力で、アゼロスにおける魔法と言う概念の創始者と言われ「魔法の守護者」や「術編み」など様々な二つ名があります。
〈古代大戦/War of the Ancients〉中に青フライトがほぼ壊滅されると言う目に会い、正気を失います。
長い間ノースレンドの居城に篭ってましたが、二次大戦中のアレクストラーザのピンチに立ち上がります。
しかし、不死者でないアゼロスの住民がアルカナの力(=魔法)を使う頻度が増えて行くに対し、マリゴスは心配になっていきます。
もしこのアルカナの乱用がバーニング・レジオンを呼び戻したらどうなるだろうか?
心配のあまり「いつかは死ぬ下等生物に魔法を使う権利はない」と極端に偏った考えに行き着き、全ての魔法利用者(特にキリン・トアの面々)に宣戦布告します。
マリゴスはノースレンドにある居城の〈ネクサス/Nexus〉に世界中の魔力を集めようと模索し、ネクサス周辺は地割れから魔力が湧き出す不安定な地域になってしまいます。
最終的にはマリゴスの居城の鍵を手に入れた冒険者達が赤フライトの竜の背に乗り、マリゴスを亡き者にします。
英語のフレイバーテキストは「マリゴスは限りある命の者共が魔法を使うのを毛嫌いする。彼は凄い憤りを感じるんだよ!」です。(「下等生物」とは、なかなか良い変換だなぁ。)
トリビアとして「マリゴスのカード絵は実は〈カレクゴス/Kalecgos〉で、HSのゲームデザイナーも認めている」ってのがあるので二代目の補足:
マリゴス亡き後、青フライトは困っていました。
有力な後継者が2名いたのです。片方はマリゴスが唱えた粛清に反対し、世界政治にもっと積極的になるべきと唄った部下カレクゴス、もう片方は粛清に賛同し、青フライトは世間から一歩下がるべきだと訴えたマリゴスの息子〈アリゴス/Arygos〉。
争いが長引くかと思いきや、アリゴスは裏でデスウィングと内通しカレクゴスを暗殺しようと企てますが、〈タレクゴサ/Tarecgosa〉の命がけの介入で失敗します。
最終的に青フライトは投票でカレクゴスを後継者に任命し、アスペクトとしての能力も継承します。

■命のアスペクト〜赤のアレクストラーザ
命のアスペクトとして、アゼロスで生きとし生けるもの全ての加護を任されたアレクストラーザ。
膨大な知力と全ての生き物に対する情熱からドラゴン族の絶対女王として君臨しています。
大地や生き物を蘇らせる力すら守っています。
古代大戦では赤フライトはバーニング・レジオンに敵対するドラゴン族の1つとして活躍しました。
大戦後にノードラシルを植えたのもアレクストラーザです。
二次大戦中、〈ドラゴンモー/Dragonmaw〉族の〈ネクロス/Nekros〉が古代大戦の遺物〈デーモンソウル/Demon Soul〉を使い、アレクストラーザと伴侶達を捕らえられ、それから長年赤フライトのドラゴンたちはオークに軍事利用されてしまいます。
しかし、《デスウィング/Deathwing》が赤フライトから子孫を横取りしようと考える事で事態は一転。
ドラゴン輸送中のオーク達をデスウィングが攻撃し、戦闘の混乱に紛れてアレクストラーザはネクロスを丸呑みし逃げる事に成功します。
その後《ローニン/Rhonin》がデーモンソウルを破壊し、奴隷になる脅威は去ります。
ローニンへのお礼として赤フライトは人間を傷つけないと約束したアレクストラーザはマリゴスが人類に宣戦布告した際、キリン・トア側に付きます。
さらに、これ以上マリゴスが粛清を続けるのは危険と判断したアレクストラーザは青フライト以外の4色のフライトを束ねた〈ワームレスト協定/Wyrmrest Accord〉を結成します。
このドラゴンと人類の連合軍に加担した冒険者たちが最終的にマリゴスを討ち取る事になります。
デスウィング復活後、アレクストラーザは彼と一回サシで勝負し、双方が瀕死の重症を負いました。
更に追い討ちをかけるかのように、伴侶であった〈コリアルストラスツ/Korialstrasz〉が〈ワームレスト寺院/Wyrmrest Temple〉にある全フライトの卵を保管してあった聖所ごと破壊した事により、裏切られたと思ってしまいます。
後にスロールがコリアルスツラスツは最後の力を使い全ドラゴン族を〈次元のドラゴンフライト/Chromatic Dragonflight〉(デスウィング親子の実験サンプルとも言える、複数のフライトの特性を持つ混合種)から守ったと気づき、アレクストラーザを鬱状態から救います。
そんなアレク姉さんの英語のフレイバーテキストは「アレクストラーザは命の繋ぎ手。彼女は全員に命と希望をもたらすが、例外にデスウィングと、マリゴスと、ネクロスがいる。」との事です。
ネクロスだけカードになっていないのに日本語版のフレーバーテキストで登場するから、これを読んだ今は納得出来るのではないでしょうか。

■大地の番人〜黒のネルサリオン、そして、死のアスペクト〜デスウィング
英知と強力を誇る地のアスペクトとなったネルサリオンですが、その権限が彼を狂わせます。
大地の重みに四六時中苦しみ、任された責任に後悔し、地中深くに眠る〈旧神/Old Gods〉に仕えれば想像を絶する力が手に入るとそそのかされる事により気が狂ってしまいます。
さらに旧神に言われるがままに自分の血をゴブリンに加工してもらい〈ドラゴンソウル/Dragon Soul〉と言うアイテムを生成します。
古代大戦中にバーニング・レジオンの悪魔の力をドラゴンソウルに込め、レジオン撃退の武器になるとマリゴスを丸め込み、ドラゴンソウルに残り4アスペクトの力も込める事に成功します。
そこで悪魔を撃退すると思いきや、ネルサリオンはその力を味方に対して使い、マリゴスの配下である青フライトを殲滅します。
ネルサリオンの体もより悪魔的な外見に変形し、名前をデスウィングに改め、ドラゴンソウルは〈デーモンソウル/Demon Soul〉へと変貌を遂げます。
旧神の狙いはデーモンソウルの力をサージェラスが使いアゼロスに侵攻する事で、旧神が捕らえられてたタイタンの檻を破る事でした。
一時期〈マノロス/Mannoroth〉がデーモンソウルの入手に成功しますが、デスウィングが取り返しに登場した時に力が暴走し、さらにノズドルムがそのタイミングで介入し、冒険者がデーモンソウルを未来に持って行きます。
未来から戻ってきたデーモンソウルはデスウィングが二度と使えないよう4アスペクトの力で封印され、マルフュリオンによって隠されます。
〈二次大戦/Second War〉中にデスウィングはデーモンソウルの居場所を発見し、自分が力を使えないなら他人に使わせようとオークを巧みに誘導し、赤フライトの奴隷期間をもたらします。
さらに交渉の末〈ドラノール/Draenor〉に渡り卵を育てようとしますが、現地民族の〈グロン/Gronn〉族に敵対視され戦闘の末アゼロスに戻ります。
次は死んだふりしてから人間に化け、アライアンスを内部から崩壊させようと企みつつ、アレクストラーザの卵を横取りしようと考えます。
最初のうちは力で4アスペクトを圧倒していましたが、ローニンにデーモンソウルは割られた結果、アスペクト達が本来の力を取り戻しデスウィングは重傷をおってしまいます。
次にデスウィングがアゼロスに現れたのが世界を震撼させた〈破砕/Shattering〉と呼ばれる事件で、登場したあまりの衝撃に世界中が地震・火山噴火・洪水に見舞われアゼロスの地形が劇的に変化しました。
そしてアレクストラーザとの戦いを経て、冒険者たちとの最終決戦が始まったのです。
英語のフレイバーテキストの直訳は「以前はネルサリオンの名で知られた誇り高きドラゴンだったが、デスウィングは気が狂いアゼロスを破砕してからようやく倒された。親父と何かあったのか?」なのですが、俗語としてのdaddy issuesって一般的には親父に虐待された女子が病んだ子になるような事なのですが、日本語版では見事に「父親の愛情が足りなかったのかね?」と性別を超え、意味だけを汲みとっています。

■アスペクトの末路〜最終決戦
WoWの第三拡張Cataclysmの最終コンテンツパッチである4.3において「デスウィング対残り4体のアスペクト+スロール(と、それを援護する者達)」の構図が出来上がり、アスペクト達の行末が描かれます。
冒険者としてプレイヤーはEnd Timeインスタンスでムロゾンドを倒し未来からの不利になる干渉を断ち、
Well of Eternityインスタンスでデスウィング討伐の鍵となるデーモンソウルを1万年前の過去(古代大戦中)から現代に持ち出し、
Hour of Twilightインスタンスでデーモンソウルをワームレスト寺院まで運ぶスロールを援護し、
Dragon Soulレイドでデーモンソウルの力とアスペクト達の力を使った冒険者達がデスウィングを討伐します。
エピローグではデスウィングの死亡(及び時間が巻き戻らないようにノズドルムによる時間固定)により『黄昏の時間』が阻止され、アスペクトとしての力が必要なくなった今、自然に力が消滅し、アスペクト達は不死ではなくなります。
これにより自分たちの役割は終わった、とアレクストラーザがワームレスト協定を解消しようと言いますが、カレクゴスがガラクロンド戦の遺物を取り出し不死でなくても何かできると訴え、協定は続く事になりました。